郡山市ふれあい科学館では2013年5月25日(土)と26日(日)に、高校天文部支援事業「パークス天文台遠隔操作による電波観測実習」を行いました。これは、オーストラリアのパークス天文台の電波望遠鏡を郡山から遠隔操作して、電波観測を行う実習です。
高校天文部支援事業は、科学館が県内にある高校の天文部や理科部など自然科学系のクラブ員のみなさんと天体観測実習やプラネタリウムを使い星空紹介などを通して、宇宙への興味や楽しみを持っていただく活動です。今回は、この事業の一環として、パークス天文台からロバート・ホロウさんと、ライアン・シャノンさんの2名の研究者に来日いただき、高校生に電波観測実習を指導していただきました。また、国立天文台水沢観測所VLBI観測所の亀谷收先生にもご協力いただきました。
パークス天文台では、このような高校生向けの観測実習をオーストラリアをはじめ世界各地で行っていますが、一週間前に実施した水沢での実習と当館の実習はアジア初とのことです。
安積高等学校、安積黎明高等学校、いわき高等学校、日本大学東北高等学校、福島高等学校の学生の皆さんに、県内各地から集まっていただきました。
まず最初に今回の趣旨の説明と、自己紹介を行いました。もちろん、英語です。高校生の皆さんにもそれぞれ英語で自己紹介をいただきました。
その後、日本語で亀谷先生から電波天文学の概論と、今回の実習に必要な知識についてお話いただきました。これからの観測に欠かせない赤経・赤緯や、較正(キャリブレーション)といった普段は使わない言葉もたくさん出てきました。
ロバート先生からも電波天文学やパークス天文台についてお話いただきました。英語での講義でしたが、高校生の皆さんは一生懸命にノートを取っていました。
インターネットで、郡山とパークス天文台を繋いで高校生がパークス天文台にある直径64mの電波望遠鏡を遠隔操作し、電波観測を行いました。
高校生の皆さんは、ものすごく緊張しながら、実際に天文学者が扱っているコンピュータを使い操作しました。日本から遠く離れたオーストラリアの電波望遠鏡を操作していることに、始めは皆さん信じられない様子でしたが、郡山のスクリーンに、パークス天文台の電波望遠鏡の現在の様子が映し出され、ゆっくりと望遠鏡が動いていくのがわかると、その姿を見て歓声がおこりました。
最初はかなりとまどう場面もありましたが、ロバート先生とライアン先生の指導でだんだんと要領がわかるようになると、観測もスムーズにいきました。
今回はパルサーという天体を観測し、観測の後は解析を行いました。パルサーは、一定のリズムで電波がやってくる「宇宙の灯台」とも言われる天体です。
パークス天文台の電波望遠鏡で実際に観測したデータがすぐに届き、そのデータで計算し解析を始めました。解析は苦労しましたが、観測したパルサーがどれくらい離れているか、距離を測定することができました。
他にも幾つかパルサーを観測し、どのパルサーが地球に近いか、遠いか、銀河系のどのあたりにいるか、などもわかりました。
少しずつ解析が進んでいくと、高校生たちも慣れてきて、お互いに議論をしたり、ロバート先生やライアン先生に積極的に質問する場面もありました。
今回はパークス天文台を遠隔操作できるという非常に貴重な体験をすることができました。最初は緊張していた高校生も、最後の記念撮影では、みなさんとても良い笑顔でした。これを機会にますます宇宙や天文に興味を持ってくださいね。そして、ロバート先生、ライアン先生、亀谷先生、本当にありがとうございました!