化学の秘密を探る
〜カイロ作りに学ぶ〜

2004/11/11


 寒くなると温かいカイロが欲しくなります。今回はカイロ作りから身近な化学の秘密を探ります。

【カイロはどうして温かくなるの?】

 市販の携帯カイロの中味を調べると使用前は黒っぽい粉のようなものが入っており、使用後の中味の色は赤茶色に変わっています。磁石を近づけるとひげのように黒い粉が付いてきます。このことからカイロには鉄粉が入っていることが分かります。使用後のカイロはこの鉄粉が空気中の酸素と結びついてさびたので赤茶色に変わったのです。物質が酸素と結びつく変化を酸化といい、このとき酸化熱がでます。普通の鉄はゆっくりと酸化するので熱を感じませんが、カイロは人為的に早く酸化させるので、程よい熱をだします。この酸化熱を利用しているのがカイロなのです。

 


【カイロを作ってみよう】

▼準備
(1) 鉄は粉状にしたものを使います。酸素と触れ合う面積を広くして効果的に熱をとりだすためです。
(2) 程よい早さで酸化させるために濃い食塩水を用意します。
(3) 鉄がべとつかないようにバーミキュライト(園芸に使う土)または木の粉を用意します。
(4) 活性炭は、空気中の酸素を取り込みやすくする働きをします。
 

▼方法(写真)
(1) 事務用のクラフト封筒にティースプーンに軽く2杯くらいの鉄粉を入れます。
(2) 封筒がぬれない程度にバーミキュライトに濃い食塩水を加えて方法(1)の封筒にティースプーンに2杯くらい静かに加えます。さらに活性炭または木炭の粉を加えて封筒に空気が入らないようして封印します。
(3) 方法(2)の封筒は空気が入らないようにビニールの袋に入れて保管します。
(4) 使用するときはビニールの袋から封筒を取り出し、よく振るとだんだん温まってきます。
(5) かなり熱くなるので長時間、直接からだにつけないように注意しましょう。使い終わったら燃えないゴミとして捨てましょう。

【カイロはいつころから使われるようになったの?】

 カイロを漢字で書くと懐炉と書きます。カイロの歴史は江戸時代にさかのぼりますが「温石(おんじゃく)」といって石をいろりやたき火で温めて懐に入れて使っていました。このことから懐炉と書くようになったのかとも伝えられてています。明治時代は麻や穀物を炭の粉末にし固めたものを容器で燃やすカイロ灰を、大正・昭和時代はベンジンを燃やすベンジンカイロを使っていました。現在のような鉄粉を使ったカイロは1970年代から使われるようになったのです。

 何気なく使っているカイロにもこんな秘密があったのですね。手作りカイロは12月1日から科学館21階ワークショップコーナーで体験できます。みなさんのご来館をお待ちしております。

 
 

(事業課 大越 清美)

 

2004年11月11日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より