植物たちの工夫
〜寒さに耐え冬を乗り切る〜

2006/01/26


  今年は雪が多く、厳しい冬となりましたが、この寒さの中で植物たちはいったいどうしているかご存じですか。人間のように、こたつに入ったり、暖かい服を着たりできない植物にとって、冬を乗り切るにはさまざまな工夫が必要です。それでは、その植物たちの工夫を少し見てみましょう。

【落とすといい物って何だ?】

 街路樹も山の木々も葉を落とし、寒々しい姿になっています。このように冬になる前に古くなった葉を一斉に落とし、冬にはまったく緑色の葉をつけない木のことを「落葉樹(らくようじゅ)」といいます。逆に、年間を通して緑色の葉をつけている木のことを「常緑樹(じょうりょくじゅ)」といいます。ただし、「常緑樹」でも、春から初夏にかけ新しい葉と入れ替わるように古い葉を落としています。「落葉樹」が秋に葉を落とすのは、寒い冬に休眠するためです。冷たい空気に触れると葉が傷み、光合成(こうごうせい)ができなくなったり、葉の裏にある空気の出入りする穴・気孔(きこう)から水分が空気中に吸い出されてしまい、水分を失って枯れたりしてしまいます。つまり葉を落とすことにより、冷たい空気に触れる部分をできるだけ減らして寒さに耐えているのです。

     


オオアレチノギクのロゼット

【雪の下にはバラが咲く?】

 冬になると背丈の低い植物たちは雪に埋もれて枯れてしまうのでしょうか。いいえ、雪の下でも枯れることなくじっと春を待っている植物もいます。その植物たちは地面にぴったりと張り付き、放射状に重なり合って葉を広げています。オオアレチノギクなどが代表的です。その姿はさながら雪の下に咲くバラのようです。このようにして越冬するものを、バラ(ローズ)の花の形と似ていることからロゼット(rosette)といいます。こうして地面に張り付くことで冷たい風を受けずにすみ、寒さや乾燥に耐えられるのです。

 

【冬と植物と子どもたち】

 子どもたちに科学の面白さを体験してもらうため希望ヶ丘図書館と連携し、12日に「放課後の科学教室」を開きました。葉脈標本作りを行いながら、葉と葉脈の役割や、秋に葉が落ちるのはなぜかなど、冬の植物の姿の「不思議」をみんなで考えることができました。

 皆さんも、普段はあまり意識して見ることのない冬の植物の姿を、観察しに出掛けてみてはいかがでしょう。


「葉脈標本作り」の様子

 
 

(事業課 遠藤 史貴)

   

2006年1月26日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より