解明進む月の歴史

2002/08/31


 1969年7月、人類が月面着陸に成功しました。このプロジェクトをアポロ計画といい、宇宙船のアポロ11号などで延べ12人の宇宙飛行士により月面探査が行われました。この結果、岩石の採集などの科学的な調査が進み、月の歴史が詳しく分かってきました。

 月は地球の衛星で、その大きさが地球の直径の四分の一ほどで約3500kmあります。冥王星を除く他の惑星の衛星は、大きくても本体の十分の一以下なので、衛星としては非常に大きな天体です。月の岩石の調査から、その成分は地球とよく似ていますが、水分が全く含まれてはおらず、蒸発しやすい元素が非常に少ないなど、違う点もあることが分かってきました。

 


月面上のクレーター群

 これらの点をうまく説明できる月誕生の原因として、ジャイアント・インパクト説が近年注目を浴びています。
 これは、地球誕生の直後に巨大な天体が衝突し、地球の一部をはぎ取りながら、地球を周回する軌道に入り、散らばった破片が集まって一つの天体に固まったというものです。
 衝突エネルギーで全体が溶けたため、蒸発しやすい元素が月から逃げたと説明することができ、コンピュータによるシミュレーションでも、衝突による月の誕生が再現できています。事実を積み重ね、45億年前に起こったことを想像できるのが科学の面白いところです。
 望遠鏡で月を見ると、表面は無数のクレーターで覆われていることが分かります。その様子はいくら見ていても飽きが来ない迫力があります。 

 

 このクレーターができた原因は、火山説と隕石(いんせき)衝突説がありましたが、アポロ計画による探査で隕石の衝突であることがはっきり分かりました。
 クレーターは、42億〜38億年前に大量の隕石衝突の時代が来て、この時にほとんどつくられました。
 特に巨大隕石の衝突は月面に大きな穴を開け、そこからは溶岩が噴出して一帯を埋めてしまいました。「月の海」と呼ばれる暗い場所がその溶岩の埋立地で、古いクレーターも埋めてしまったために、クレーターが少ない場所になっています。また「月の陸」と呼ばれる明るい場所は、古い地形が残っており、クレーターも密集しています。


アポロ計画による月面探査
写真提供:NASA

 

 月の海と陸という明暗の模様は肉眼でもよく見えますが、その模様をいろいろな姿に想像することができます。もちつきウサギ、はさみを振り上げたカニなどは有名です。皆さんは、どんな姿に見えるでしょうか。先に紹介した月の歴史も含めて、その姿を想像しながら月を眺めるのも楽しいものです。

(天文係 木村 直人)

2002年8月27日 読売新聞福島版 「星のある風景」より