「すばる」は夜空のアクセサリー

2002/12/04


 

 日の入りも早くなり、夜の長い季節となりました。宵空、東の方角を見ると、狭い範囲に星がごちゃごちゃと集まっているところがあります。目の良い人ですと、星を6個から7個ほど数えることができます。この星の集まりを「すばる」と呼び、星座ではおうし座の背中あたりの位置となります。
 平安時代には清少納言が『枕草子』の中で「星はすばる、ひこぼし、ゆうづつ・・・」と記しており、星の中ではやはり「すばる」が美しいということをつづっています。西洋ではプレアデス星団と呼ばれていますが、これはギリシャ神話に出てくるプレアデス姉妹から名づけられたものです。プレアデス姉妹は美しい7人姉妹とされ、冬の星座として有名な狩人オリオンに追われ、その姿をハトに変えて逃げたとされています。


夜8時頃のおうし座の見え方

 「すばる」といえば、車や、歌謡曲、日本がハワイに建設した望遠鏡など、様々な場面で使われている名前ですが、名前の由来をたどってみると、時代をずいぶん昔へさかのぼることになります。「古事記」、「万葉集」などの中では、「須売流玉(すまるのたま)」という単語があり、これは勾玉(まがだま)などを糸でつないだアクセサリーという意味があります。


 また、「統る(すばる)」と書いて、星々が糸で結ばれるように集まっているという名前の意味もあるようです。夜空のアクセサリー・・・、そう思って実際に「すばる」に双眼鏡を向けてみると、青白くきらきらした星たちを双眼鏡の視野いっぱいにいくつも見つけることができ、まるでこっそりと宝石箱をのぞいたような気分になります。


すばる(プレアデス星団)

 

 「すばる」の距離は比較的近く、約400光年(光の速さで進むと、約400年かかる距離)となっています。「すばる」に含まれる星たち、すなわち高温の青白い星たちの正体は、星の一生の中ではずいぶん若い星です。星はガスから生まれますが、生まれた後、次第に星のまわりのガスはなくなってしまいます。「すばる」を双眼鏡で見ると青い星の周りにぼんやりとガスがまだ見えており、人間でいえば、まだオムツの取れていない赤ちゃんといえるのかもしれません。「すばる」は、大きなガス星雲の中でほとんど同じ時期に生まれた星の子どもたちです。そんな星の子どもたちが綴る夜空のアクセサリーを今宵の空に探してみてください。

(天文担当 田辺 玲奈)

2002年12月3日 読売新聞福島版 「星のある風景」より