この冬は土星が見ごろ

2002/12/19


 

 木枯らしが吹く季節になり、宵の東の空には冬を代表するオリオン座がひときわ大きく見えています。今年は、そのオリオン座のすぐ左上に、一等星くらいに輝く土星が見えています。土星は普通の星と見え方に大きな違いはありませんが、色はやや黄色いことや瞬(またた)かずに光るという特徴を知っていれば、その区別はつきやすい星です。ぜひ一度、探してみてください。


土星:NASA and The Hubble Heritage Team

 土星といえば、環を持つ惑星としてよく知られています。小さな望遠鏡でも40倍くらいの倍率があれば、見事な環を見ることができます。科学館の観望会でも、実物を見た方々からは、歓声が上がる大人気の天体の一つです。今月の土星は、地球から約13億キロメートルも離れたところにあります。
 その本体は水素やメタンなどのガスが集まってできており、地球のような固い表面はありません。直径は約12万キロメートルで、地球の約10倍も大きいのに、土星の一自転は地球の半分以下の約11時間という速さのために、遠心力で楕円形につぶれています。

 本体の模様は、数本のしま模様が分かる程度です。環をよく見ると、ニつか三つに分かれて見え、外側から内側へAリング、Bリング(最も明るい)、Cリングと呼びます。現在は地球との位置関係から土星の南半球側が見え、特にここ数年は輪が大きく開いて見えます。環の区別を見るいい時期ですから、観察するチャンスがあったら注目して見てください。土星は約30年の周期で太陽の周りを公転しています。その周期で、地球から見る方向も変わり、環をいろいろな角度で見ることができます。


土星の環の変化(1996年から2000年)
写真:NASA and The Hubble Heritage Team

 

 2009年には環を真横から見る位置になります。その時には一時的に環が消えてしまう現象が起こります。大きな環が消えるということは、その厚みがたいへん薄いからです。約20年前のボイジャー探査機による調査で、厚さが100メートル以下という驚くべき薄さであることや、その正体がほとんど氷の破片であることが分かりました。しかし、「なぜ氷の破片の環があるのか?」という疑問の答えはいまだ不明です。今後の探査も含めた研究が待たれますが、皆さんはどう思いますか。その答えを想像することが、科学の第一歩になります。

(天文担当 木村 直人)

2002年12月17日 読売新聞福島版 「星のある風景」より