頭上に輝くふたご座の星

2003/03/18


 

 午後8時ごろ、高い空に木星がひときわ明るく光っています。星座を作る恒星はキラキラと瞬くのに対して、木星の光はほとんど瞬くことがないという特徴があるので、木星かどうかはすぐに見分けることができるでしょう。

 その木星よりさらに上、ほとんど頭上に二つの星が仲良く並んでいます。この星々がふたご座の星で、白く光るのがカストル、やや赤く光るのがポルックスという名前がついています。ふたごという名前がついていますが、その明るさはカストルが1.6等でポルックスが1.1等なので、両星は2等星と1等星に分けられています。

 日本では、二つの星が並ぶ様子から「かに目」、色の違いを上手に表して「金星、銀星(きんぼし、ぎんぼし)」などと呼ばれていました。皆さんだったらどんな名前を付けますか?そんなことを想像するのも楽しいものです。ふたご座は、カストルとポルックスから西に見えるオリオン座の方向へ、二列に星を三個づつほど結ぶとできあがります。古来より太陽や月、惑星が通過する位置にあるので占星術的に重要視され、最も歴史ある星座の一つです。


カストル

 ギリシア神話では、兄のカストルと弟のポルックスはいつも連れだって行動し、それぞれ乗馬とボクシングの名手でした。また古代から中世の地中海沿岸では、船の導き手として知られ、嵐の時はへさきに立つ航海の守護者としてあがめられました。嵐の晩に船のマストにセント・エルモの火が出ると、船乗りはカストルとポルックスの名を呼んだと伝えられています。船首の飾りにこの双子の像を付けることも多くありました。

 天体望遠鏡でカストルを観察するとカストルA(2.0等)とカストルB(2.9等)の二つの星に分かれて見えます。ABの二星は約500年の周期でお互いを回り合う星で、連星といいます。大望遠鏡では、ABの周りを数万年の周期で回るカストルC(9等)が見つかります。これでカストルは三重連星であることがわかったのですが、それぞれがさらに連星であることがわかったのです。
 Aは3日、Bは9日、Cは19時間という周期で公転する連星でした。結局カストルは、双子どころか六人兄弟の六重連星という、なんとも複雑な星として生まれてきました。ちなみに夜空の半分以上の星は連星として生まれてきています。


ふたご座(ボーデ)

 

 ちょうど1年間、郡山市ふれあい科学館のスタッフが星に関係したいろいろな話題をご紹介してまいりました。科学館でも様々な内容のプラネタリウム番組や科学の実験などを行っておりますので、今度は科学館でお会いしましょう。

 

(天文担当 木村 直人)

2003年3月18日 読売新聞福島版 「星のある風景」より