太陽系の仲間たち(6) 
〜月の表面に「海」と「陸」〜

2003/09/23


 

 今回は月の表面についてお話します。

 月を望遠鏡などで拡大すると、月面にはたくさんのクレーターが見えますが、中にはクレーターの少ない場所もあります。この場所は肉眼でやや暗く見え「海」と呼ばれています(明るく見える部分は海に対して「陸」と呼ばれています)。

 


月の名前(五藤光学研究所提供)

 月が誕生したころはさまざまな天体が月面に衝突し、巨大なクレーターがたくさんできていました。衝突した際の衝撃で割れ目からは月内部のマグマがあふれ、クレーターを埋めてしまうこともあり、このような「海」とよばれるなだらかな地形ができたとされています。海には「静かの海」「危難の海」「晴れの海」などといった名前がつけられています。

 

 さて、こうした月の地形の名前を決めたのは誰でしょう? 17世紀、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡で月面観察をして残したスケッチでは、すでに黒く見える部分を「海」と呼んでいました。以後、さまざまな学者たちが月面観測を行い、特徴のある地形には勝手に名前がつけられていきました。

 20世紀になり、国際天文学連合により統一が図られ、月面の正式な名称が決められ、今でも国際天文学連合によって管理されています。

 クレーターや環状の地形の場合、大きなクレーターは既に亡くなっている天文学者や科学者の名前、また、小さなクレーターは一般的な名前(ファーストネーム)が使われます。割れ目や谷は近隣のクレーターの名前、山脈のようなところは地球上の山脈の名前を使用することとなっています。さらに海は、ラテン語の天気、または抽象的なものを表した言葉をとります。それ以外の地形は、経度によって表示されます

 あまり知られていませんが、地球からは見ることができない月の裏側には天文学者の「平山(信)」や物理学者の「長岡(半太郎)」といった日本人の名前がつけられている部分もあります。

 


クレーターだらけの陸(上)と
なだらかな地形の月の海(下)

 

(天文係 田辺 玲奈)

2003年9月23日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より