アンテナ銀河
〜大接近、星の並び崩れる〜

2003/11/27


 

 今回は、変わりゆく銀河の姿をご紹介しましょう。

 


「アンテナ銀河」 (宇宙望遠鏡科学研究所提供)

 不規則銀河に、「アンテナ銀河」というニックネームのついた銀河があります。まず左の写真の左側が、この銀河の全体の様子です。まるで昆虫の「触角」のように、中心から伸びているものが見え、とても不思議な形をしている様子が、よく分かると思います。中心部分を拡大した右側の写真を見てみると、二つの渦巻銀河がまるで手をつないでいるかのように見えます。これは、まさに二つの銀河が大接近しているところなのです。

 

 広い宇宙のなかで、なぜ銀河同士がこれほどまで近づいていくのでしょう。銀河は一つの集団として強い重力を持っています。近くに銀河があれば、重力でお互いを引きつけあうことで、だんだんと近づきます。その結果、相互の銀河が大接近することとなるのです。

 二つの銀河が大接近してくると、お互いの重力が働き銀河の星の並びが崩れます。銀河がお互い結びつくように星が引っ張られていく部分と、潮汐力(ちょうせきりょく)で星が相手の銀河の反対側に伸びていく部分ができます。こうして不思議な銀河が作られていくのです。

 このような姿は、コンピュータによるシミュレーションで詳しく調べられるようになりました。不規則銀河には、銀河が接近してできたものがいくつもあることがシミュレーションの結果から分かります。

 次回は「宇宙の交通事故」、銀河がさらに接近して衝突するとどうなるかをご紹介します。


シミュレーションによる不思議な形の銀河ができるまで。 図の上から下に向かって時間が過ぎると、星の並びがだんだんと崩れる様子がよく分かります。 (Toomre,A,1978,IAUS 79,109より)

 

(天文係 安藤 享平)

2003年11月25日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より