彗星の正体は?
〜ちりに覆われた氷の塊〜

2004/04/14


 

 まもなく、星空に尾を引くほうき星・彗星(すいせい)が2つも見られることが期待されていますが、その正体は何でしょうか?

 


彗星の正体?の汚れた雪。
裏磐梯で残っている雪を丸めてみました。
彗星の表面はもっとチリに覆われています。

 彗星は惑星のように大きな岩やガスの塊でもなければ、太陽のように自分で光り輝くわけでもありません。彗星の正体をひと言で例えるとすれば、「汚れた雪だるま」です。

 今では県内でも雪の残っている場所は少なくなりましたが、雪の残っている場所では泥や車の排気ガスで黒っぽく汚れていることが多いと思います。それを丸く固めた姿を想像してください(写真上)。

 突然星空に現れ消えていく姿は、広い宇宙をどこまでも旅しているように思いますが、実際には太陽を中心とした「太陽系」の仲間の天体なのです。

 

 彗星のふるさとは、冥王星の外側にある「カイパーベルト」や太陽から1光年ほどの距離にある「オールトの雲」という場所です。そこに彗星の「核」と呼ばれる直径数キロから数十キロのちりに覆われた氷の塊がたくさんあります(写真下)。それが、あるとき太陽に引き込まれ、太陽に近づいてくるのです。

 太陽に近づくと、それまで冷え固まっていた核が熱などで溶けてきます。すると、ちりの間から溶け出した水やその中に含まれている一酸化炭素などがイオンとなり、太陽と反対側に流れていきます。また同時に、ちりも核から離れて太陽と反対側に流されます。こうして彗星の尾ができるのです。

 また、彗星の核は太陽系ができた時に作られたので、そのまま太陽系ができた時の様子が残されていると言えます。彗星を詳しく調べることは、宇宙の歴史を調べることにもなるのです。


探査機「スターダスト」が撮影した彗星の核の写真(合成)。彗星から500キロまで近付いて撮影されました。(提供:NASA)

 

 次回は、いよいよ本県でも見られる彗星の観望ガイドと、ゴールデンウイーク中に起きる月食についてご紹介します。

 

(事業課 安藤 享平)

 

2004年4月13日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より