ブラックホールの発見
〜強いX線で存在に気づく〜

2004/07/16


 

 ブラックホールは、近づいたものは何でも吸い込んでしまうという不思議なものですが、これは空想上のものではありません。宇宙には、ブラックホール候補といわれる天体がいくつもあります。そんなブラックホールの発見エピソードを一つご紹介しましょう。

 


赤い丸で示した、はくちょう座X−1の大まかな位置
(提供 五藤光学研究所)

 はくちょう座の方向からとても強いエックス線が出ていることが分かったのは、1960年代のことです。この天体は「はくちょう座X−1(エックス・ワン)」と名付けられました。

 エックス線は、レントゲン写真でおなじみですね。宇宙の天体からもエックス線がやってきていますが、地球の大気に遮られるので地上までは届きません。ロケットや人工衛星を使って大気の外に出ることで初めて観測ができるようになります。はくちょう座X−1もロケット観測で発見されました。

 

 エックス線の出ている場所を調べてみると、そこには大きくて青白い星がありました。どうやら、エックス線を出す天体は、この青白い星とペアになり、お互いの周りを回っているようです。また、エックス線はとても小さい天体(半径300キロメートル以下)から出ています。しかし、その重さは太陽の10倍と、とても重いのです。このように重くて小さな天体は、星ではあり得ずブラックホールだと考えられます。

 このブラックホールは、隣の星のガスを強い重力で吸い込んでいます。吸い込まれるガスは、ブラックホールの周りをぐるぐる回るうちに摩擦で熱くなります。温度の高くなったガスからはエックス線が出ます。エックス線が出ているおかげで、私たちはブラックホールの存在に気づくことができたのです。


はくちょう座X−1の想像図。左側の青白い星から右側のブラックホールへガスが吸い込まれている。
(提供 五藤光学研究所)

 

 次回からは、夏の星空を楽しむコツを紹介します。

 

(事業課 石原 裕子)

 

2004年7月13日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より