宇宙を飛ぶ望遠鏡
〜大気外でエックス線感知〜

2004/11/30


 

 宇宙を観測する望遠鏡も現代ではさまざまになっています。望遠鏡の置かれる場所についても地面の上とは限りません。今回は、天体からのエックス線をとらえるために宇宙を飛んでいる、ちょっと変わった望遠鏡をご紹介しましょう。

 


2001年まで運用されていた日本で4番目のエックス線天文観測衛星「あすか」(宇宙科学研究本部提供)

 宇宙空間に出ると、目には見えませんが、人体には危険な電磁波も飛んでいます。その一つがエックス線です。エックス線はレントゲン写真を撮る時にも使いますが、体に当てるのは一瞬だけです。これは、エックス線を大量に浴びると体に悪いからです。

 私たちが普段、このような危険な電磁波を浴びる心配もなく安心して生活できるのは、地球にある大気がこれらの電磁波を吸収して地上に届かないようにしているためです。

 ところが、この地球の大気も天文の観測にとってはじゃまなものです。

 

 天体の中にはエックス線を出しているものがあります。エックス線は、爆発、噴き出し、吸い込みなどの激しい現象が原因で出されることが多く、エックス線を観測することにより、星の爆発、銀河中心から噴き出すジェットなどについて詳しく知ることができます。

 しかし、地球の大気にさえぎられ、エックス線は地上まで届きません。

 この問題を解決するために、大気の外へ出られるロケットや人工衛星を使った観測が行なわれてきました。日本のエックス線観測衛星も、「あすか」が、ブラックホールの形成にヒントを与える「中質量ブラックホール」を発見するなど、天文学の発展に役立っています。


太陽観測衛星「ようこう」で観測された太陽のエックス線画像。太陽表面の爆発現象が見える
(宇宙科学研究本部提供)

 来年度には、日本の新しいエックス線天文衛星「アストロE2(イー・ツー)」の打ち上げが予定されています。今度はどんな発見があるのか楽しみですね。

 

(事業課 石原 裕子)

 

2004年11月23日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より