アンタレス食
2005年3月31日(木)未明撮影

2005/04/02


   

  去る3月31日未明、福島県をはじめとする日本各地において、珍しい天体現象である「アンタレス食」が観測されました。中通り地方でも雲の多い天気ながら観測することができ、当館も撮影に成功いたしました。

 今回の「アンタレス食」とは、さそり座に輝く赤い1等星「アンタレス」が月(月齢20)に一時的に隠されるという現象で、日本では14年ぶりのことです。では、この天体現象を振り返ってみましょう。(写真中の赤い丸は月の部分で、欠けているために写真右上は暗くなっています)

   

田村郡小野町にて撮影


0時47分23秒撮影
アンタレスは月の向こう側にあります。

撮影日時:

2005年3月31日

撮影者:

安藤 享平・近藤 正宏・高島 仁

コメント:

アンタレスが月の東側(明縁:明るく輝く部分)から隠される、現象の始まりの時間である午前0時29分前後は残念ながら、雲に隠され撮影することができませんでした。しかしその後、雲の切れ間から月が見られるようになり、月の西側(暗縁:月の暗い部分)からアンタレスが再び見られるようになった状況を撮影することができました。左の写真のように、時間とともに月とアンタレスの位置関係が変化していることがわかります。

   


1時45分08秒撮影
アンタレスが月の左上(西側)から出てきました。

<なぜアンタレス食が起きるのか?>

 月は1ヶ月近くかけ、地球の周りを1回転します。そのため、地球から見ていると太陽光の当たりかたが変化するために満ち欠けが起きるほか、星座の中を少しずつ位置を変えていきます。

 地球からは夜空の星より月のほうが近い位置関係にあるため、月が星座の中を動くうちに星を一時的に隠してしまう「星食(せいしょく)」という現象が起こります。この中で月の通り道(白道)付近にある明るい星は、さそり座のアンタレス、おうし座のアルデバラン、しし座のレグルス、おとめ座のスピカであり、まれに条件が揃ったときに地球から見ると、月がこれらの星を隠すということが起こります。

 


1時58分30秒撮影
月とアンタレスの距離が離れてきました。月が星の間を少しずつ動いていることがわかります。

  

<アンタレス食を観測して分かること>

 時間が経過するごとに、月の東側にあったアンタレスが、月に隠れ、そして月の西側から再び見られる様子から、月が星より手前にあるということ、 星座の中を月が少しずつ位置を変えていくということが分かります。

 また、地球上の各地で現象の起きる時間を正確に観測することで、 月面の地形(地球から見て縁に当たる部分)を細かく調べることや、月と星の位置関係が分かり、星の位置や運動を細かく調べることができます。

 科学的にも、今回の現象の観測は大きな意義を持っているのです。