秋の星空を眺める(1)
〜しばらく見ごろの火星〜

2005/11/09


   

 秋は空気も澄み、青空が非常に高く感じられます。夏のころの何となくジメッとした空に比べると、星の輝きも美しく感じられる時期です。まだ寒さもそう厳しくないので、ゆったりと星空を眺めてみましょう。

 このごろ、宵の東の空にひときわ明るく輝く赤い星が目につきます。これが火星です。等級にしてマイナス2等と、これ以上明るい星はないので、すぐに見つけられることでしょう。今年は2年2ヶ月ごとに起こる火星接近の年で、10月30日に地球から約6900万キロの距離に最接近しました。現在少しずつ地球から遠ざかりつつありますが、これから冬にかけて、当分のあいだ星空でその輝きを楽しむことができます。

 

   


「紅葉と火星」 夜の風景では、火星(中央上のいちばん明るい線)が紅葉の赤をいっそう引き立てます。
(裏磐梯にて)

 昔の人にとって、火星の赤い輝きは不気味な印象をもたれており、西洋では軍神マルス、中国では熒惑(けいわく)と呼ばれ、占星術の上では不吉をもたらす星として見られてきました。現代の私たちにとって、火星の輝きはどのように見えるでしょう。少しロマンチックに見るなら、宝石のルビーの輝き、とまではいきませんが、琥珀(こはく)のような輝き、とも見えるのですが・・・これは夜空を見上げて確かめてみてください。

 

 望遠鏡で火星を見る機会があれば、表面の様子に注目してみてください。赤い表面に黒っぽい模様が見られるでしょう。今から100年ほど前には、この黒い模様は火星人が作った「運河」に違いないと真剣に考えた人もいました。日本研究家で福島に来たこともあるアメリカ人、パーシバル・ローウェルもその一人で、私財を投じて天文台を作り、火星の模様(運河)を詳細にスケッチしています。


望遠鏡で撮影した火星表面の様子
齋藤正一氏(S.P.V)撮影

 

 火星の接近する距離は毎回異なり、今回より近づくのは2018年までありません。火星の鋭い輝きをぜひこの機会にご覧ください。次回は夕焼け空に輝く「宵の明星」をご紹介します。

 

(事業課 安藤 享平)

     

2005年11月8日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より