秋の星空を眺める(2)
〜夕暮れに輝く宵の明星〜

2005/11/24


   

 11月も終わりに近づき、太陽が沈む時刻もずいぶんと早くなりました。そんな夕暮れ時に南西の空あたりに、ひときわ明るく輝く一番星が見えます。これが宵の明星、金星です。

 

   


左が探査機マリナー10号で撮影された金星。右が探査機マゼランのレーダー観測から作った金星の地形図。表面の厚い雲の下にはデコボコした地形がありました。(画像提供:NASA/JPL-Caltech)

 金星は太陽系の惑星の一つです。惑星とは太陽のように自ら輝く星(恒星といいます)の周りをまわっている星です。私たちの地球も太陽系の惑星です。金星は、夕方の西の空(宵の明星)か、明け方東の空(明けの明星)でしか見ることができません。これは金星が地球よりもさらに内側をまわっているために、いつも太陽に近い方向に見えるためです。

 夜空の星たちの中でも、明るく輝く金星のことを西洋では、美の女神「ヴィーナス」の名をつけました。地上から見たら、まさにその名にふさわしい輝きを放つ金星ですが、その素顔はどういう姿なのでしょう?

 

 金星にはさまざまな探査機が到着しており、くわしい観測がされています。これらの観測から、金星の表面は半分以上が平原ですが、深さが数百キロにもなる谷もあり、地形はずいぶん複雑なようです。美の女神の素顔はずいぶんデコボコしていたようです。

 また、金星にも地球と同じように大気がありますが、ほとんどが二酸化炭素でできています。二酸化炭素は重いので気圧が高く、地球の90倍もあります。さらに、熱を逃がさないために金星の表面の温度は450℃近くにもなります。この厚い二酸化炭素の大気が、太陽の光をよく反射するために金星は明るく輝いています。美の女神ヴィーナスはデコボコだらけの顔に二酸化炭素の大気の厚化粧をしている・・・といったところでしょうか。

 そんな宵の明星、金星ですが、12月9日に最大光度となるマイナス4.7等になり、とても明るく輝いています。みなさんも夕暮れ時、南西の空にぜひ見つけてみてくださいね。

 次回は冬の星の輝きの秘密についてご紹介いたします。


22日午後5時では南西近く、地平線より少し高いところに金星が見えます。(ビッグアイ20階郡山市ふれあい科学館より撮影)

 

 

 

(事業課 水谷 有宏)

     

2005年11月22日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より