宇宙への挑戦(3)
県立医大 〜無重力での血圧解明〜

2006/02/15


   

  地球上は重力が働いていて、私たちは常に地球から引っ張られています。ところが宇宙は無重力状態で、重力をほとんど感じません。このような宇宙では私たちの体にどんな変化が起こるのでしょうか?

 

   


山崎先生。シャトル実験は準備に5年を要しその間NASAの研究者と何度も打ち合わせを行った。

 福島市内にある福島県立医科大学生理学第一講座(狭間章博教授)の山崎将生講師らのグループは、宇宙という無重力状態での生き物の体の仕組み(宇宙生理学)についての研究を行っています。

 私たちは血液の流れによって体中に酸素や栄養を運んでいます。生活の中で体は必要に応じて血圧を調整し、上手に血液を循環させる仕組みを持っています。例えば、人が姿勢を変えることで血液が受ける重力の影響が変化します。このため急激な姿勢変化(急に立ち上がるなど)により、脳に十分な酸素が送られず立ちくらみが起こることがあります。私たちの体にとって血圧調整はとても大切なのです。

 

  当時県立医大同講座の清水強教授を中心とするグループは1998年に打ち上げられたスペースシャトル(STS-90)に12組のラットの親子を乗せ、16日間の宇宙実験を行いました。その結果、「無重力状態下で血圧調整の仕組みがおとろえる」ことを世界で初めて解明しました。宇宙という特殊な環境では生物の体に大きな変化が生じる可能性があり、今後人類が宇宙に長期滞在するためにもこのような研究はとても重要となります。

 山崎先生たちは現在も他大学の研究者らと協力し研究を続けているのです。

 県内では他にも宇宙に関する研究が行われている大学があります。身近なところでもいろいろと宇宙への挑戦が行われているのですね。次回は太陽系外の惑星についてご紹介します。


シャトル打ち上げの様子と宇宙へ行ったラット
(C)NASA/JAXA

 

(事業課 近藤 正宏)

     

2006年2月14日 福島民友新聞 「ふくしま星空散歩」より