[12] 電磁石を作ろう(下)

2002/08/07


 エナメル線を巻きつける棒の形に注目してみましょう。前回はクギなどのまっすぐなものでしたが、形や大きさを変えて実験を続けてみます。
 U字型の金具を手に入れましょう。ない場合はクギをU字型に曲げてもかまいません。ここにエナメル線を巻きつけるのです(写真1)。
 前回と同じく、エナメル線の巻き数やU字型金具の大きさ、電池の数などを変えて、ぶら下げるおもりの数を比べてみましょう。このとき、平らな鉄の板をU字の両はしにつけ、そこにひもなどで皿をつるすとよいでしょう(写真2)。実はこの平らな板を入れると強力な電磁石になるのです。


(写真1)エナメル線を巻いたU字型の金具


(写真2)平らな板をつけて
おもりをぶら下げた電磁石

 

 電磁石は現在、モーターや発電機の重要な部分として、おもちゃから精密機械まで幅広く利用されています。その大きさや形は、それぞれの機械によってさまざまです。これらは十九世紀はじめに電気と磁気の関係を調べるため、多くの科学者が何種類もの電磁石や電池を作って研究に取り組んだものとそう変わりはありません。そして、その形や性質から電流、電圧、抵抗といった性質を理解してきたのです。

 

 十二回にわたって科学館の実験や観察を紹介してきました。最後にふれたいのは、人間とのかかわりです。
 例えば、連載で取り上げた天文学は、古代から、こよみの問題と関わっていました。「浮力」の考え方は、にせ金を見破るために使われ、密度を用いて解決に当たりました。ムラサキキャベツを使った色の実験は、産業革命後に大量に作られるようになった織物の漂白(ひょうはく)や染色(せんしょく)の技術的な問題から登場しました。
 このように、科学や技術が私たちの生活と密接に結びついて発達してきたことを強調したいのです。ですから科学の知識だけでなく、自然と科学、そして人間との関わりも感じとって実験に取り組んでもらえれば、科学により興味がわくのではないかと思います。

 

(展示情報係 岡田 努)

 

2002年8月2日 福島民報新聞 「スペースパークで挑戦 夏休み!科学実験」より


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