科学の広場

海に向かう渓流魚 〜体内の塩分 上手に調節〜

 虫の音のにぎやかな秋を迎えました。さまざまな農作物がおいしくできることから、「食欲の秋」とも称される季節です。


水の浸透現象

 
 さて、秋の代表的なおいしい魚としては、サケが挙げられるでしょう。サケといえば、海を回遊した後に生まれた川に帰って来る魚として知られていますが、ほかにもサケのように降海する魚がいることはご存じでしょうか。

 それは、渓流魚として有名なイワナやヤマメです。イワナの中には海でアメマス、ヤマメの中にはサクラマスとなって帰って来る個体があるのです。名前が変わってしまうのは、外見的に別の魚のようになってしまうからで、大きさは最大で約70センチ、色はピカピカの銀色に変わってしまうのだから驚きです。

 大きさについては、海の豊富なエサが原因ですが、茶色や紺青、黄色をしていた魚が全く違う色になって帰って来るのはとても不思議です。

 実は色の変化の秘密は、ウロコが銀色のウロコに変わってしまうことにあるのです。これは、川から海に降りる時に起こるそうで、釣り人の間では「銀毛」と呼ばれています。

 それにしても、どうしてウロコが変わるのでしょうか。それは、海水と淡水(川や湖の水)の塩分濃度の違いに原因があるのです。言い換えるなら、魚の生活環境が変わるからなのです。

 濃度の異なる水同士が接すると、濃度を均一にしようとする浸透という現象が起き、濃度の低い方から高い方に水が浸み込みます。

 ですから、もし、淡水魚がウロコを変えないままで川から海に入ったとすると、どうでしょうか。浸透により、淡水魚の体内から水分が外に出ていき、ついには死んでしまうのです。


渓流魚を代表するイワナ

 
 また、アメマスやサクラマスは、排せつ物によって体内の塩分濃度を調節する事もできます。本当によくできたメカニズムです。

 さて、最後は科学館からのお知らせです。10月のサイエンススタジオでは、「重い」と「軽い」をキーワードに密度の実験と工作が楽しめます。みなさんも不思議を解き明かしに、ぜひ、遊びに来てください。

 

(事業課 日下 政勝)

2007年9月27日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より