皆さんは摩擦という言葉にどんなイメージをお持ちですか。科学的には、接している2つの物が動くとき、それを妨げようとして働く力のことをいいます。
摩擦といってもいろいろな種類があります。止まっている物の間に働いている摩擦が「静止摩擦」、動いている物の間に働く摩擦が「動摩擦」といいます。
社会では経済摩擦、貿易摩擦など摩擦イコール不一致・不和といったあまり良くない意味で使われることが多いのではないでしょうか。
こうしてみると摩擦なんて存在しないほうがいいように思えますが、本当にそうでしょうか。もし、今この瞬間に摩擦が無くなったらこの世の中はどうなるのでしょう。
静止摩擦が無くなってしまうと、止まっているものが動き出すのを妨げる力がなくなるので、まず人間は立っていることが困難になります。釘やねじは物を止めることができず建物などは崩壊し、山や丘は崩れ平地になろうと動き出し、凸凹のない地球ができることでしょう。また、動摩擦は動いている物の動きを止めようとする力なので、これが無くなると動いている物体は永久に動き続けようとします。走っている車や電車は止まることができなくなります。さらに、タイヤや車輪を使って動くものは、回転を伝えることができなくなり、すべてが動かなくなってしまいます。何かとても不思議な世界が現れてきそうです。
摩擦を利用した火おこし機
どうですか、摩擦のない世界。みなさんは住んでみたいと思いますか。
私たち人間は、大昔から摩擦をうまく利用し、付き合ってきました。たとえば、木と木を擦り合わせ、その摩擦による熱で火をおこしたり、バイオリンのように弦と弓との間の摩擦できれいな音を出す楽器なども作りだしました。また、重い石を移動させるときには、石と地面の間に丸い木の棒を挟み、棒が転がるのを利用して移動を容易にしました。
摩擦がどれだけありがたい存在かお分かりいただけましたか。摩擦は嫌なことばかりではありません。現在の日常生活でも、私たちの身の回りには摩擦を利用した便利なものがたくさんあります。摩擦は、私たちの生活には必要不可欠なものなのです。
郡山市ふれあい科学館では、5日から2月29日までサイエンスショー「摩擦のちから」を開催しています。実験を通して、私たちの生活に隠れている摩擦のちからを解き明かします。ぜひ、ご来館いただき楽しいショーをご覧ください。
(事業課 厚海 一夫)
2008年1月10日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より