宇宙空間で運動する宇宙飛行士の毛利衛さん
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春といえば、生き物が冬の眠りから目覚め活動を始める季節。私たちも暖かくなり、体を動かしたくなりますね。皆さんは激しい運動をした翌日、全身に激痛が走った…という経験はないでしょうか。今回は、多くの方が経験をしている筋肉痛についてお話します。
私たちが実際に感じている筋肉痛のほとんどが、自由に体を動かす骨格筋という、自分で意識して動かすことのできる筋肉群に出る痛みです。筋肉には他に心臓を動かす心筋や、胃や腸などを動かす平滑筋という意識して動かすことのできないものがありますが、これらに筋肉痛は起こりません。
では、なぜ筋肉痛は起こるのでしょうか?
現在、その原因は、大きく分けて2つあるといわれています。1つは普段使わない筋肉を過度に使い過ぎることで、血行が鈍って、体内に酸素や栄養が十分に行き届かなくなるためです。その時、血液中にはヒスタミンやカリウムなど、痛みを引き起こす物質や疲労物質といわれる乳酸(近年、疲労回復物質ではないかとの研究も進められています)が発生しています。もう1つは、筋肉組織の筋繊維が損傷するためです。
ところで、宇宙空間へ行くと地上のような筋肉痛は起こるのでしょうか?
実は、起こらないのです。宇宙では、無重量(無重力)のため重さがなく、筋肉をあまり使わないのです。宇宙空間では、普段、自分の体を支えている足やおなかや背中などの筋肉も、それらを支える必要がないため、衰え、委縮してしまいます。1度失われた筋肉は回復が困難なため、宇宙飛行士は、宇宙へ行く前に筋肉をつけたり、宇宙空間でも絶えず運動を続けたりと、地上に戻っても大丈夫なように、さまざまな努力をしています。
月では体重が軽い! ムーンジャンプ!!
現在、世界各国で月の探査が始まっていますが、将来私たちが、月へ旅行に行くことができたらどうなるのでしょうか?
月の重力は、地球より弱く6分の1なので、体重60キロの人は10キロになります。そこで使う筋力は少なくてすみ、地上より楽な生活になるため、きっと筋肉が衰えてしまうでしょう。そのため、月に滞在中は、地球にいる時よりも多く運動をしなければいけないのかもしれませんね。
重力が弱いところでは、どれだけ筋肉を使わなくていいのか、ふれあい科学館の体験型展示物「ムーンジャンプ」をためしてみてはいかがでしょう。そして、これからやって来る「素敵な春♪」に向け、筋肉痛にならないよう身体を動かす準備をするのもいいかもしれません。
(事業課 藤田 真由美)
2008年3月6日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より