科学の広場

鉄道ジオラマは日本一の規模

 郡山の美しい街並みと遠くの山々を一望できる科学館の22階展望ロビー。その一角に、郡山の発展の歴史を模型で再現した「鉄道ジオラマ」があります。明治、昭和初期、現代に分かれたジオラマの中を、SLやさまざまな列車の模型が走ります。



ジオラマの様子
(左の赤い車両が金太郎、青い車両が整備車)

 
 模型の車両の大きさは、実物の150分の1。車輪の幅が9ミリであることから、数字「9(Nine)」の頭文字を取って「Nゲージ」と呼ばれています。たくさんの荷物を運ぶ貨物列車の機関車「金太郎」の車両が約25メートルだとすると、模型ではなんと約17cmになります。このように、小さな模型ですが、ジオラマの総面積は40平方メートルもあり、Nゲージのジオラマとしては、日本一の規模を誇っています。

 ところで、Nゲージの車両が動く仕組みを、皆さんはご存じですか? 実際の電車は、線路の上に電線があります。ここに電気が流れており、電車の屋根に付いているパンタグラフと呼ばれる集電装置で電気を集め、その電気でモーターを回して走行します。ところが、ジオラマを見ると電線らしきものは見当たりません。Nゲージでは、レールに電気を流し、その電気を車輪で集めて走っているのです。

 このレールには、約12ボルトの電気が流れていますが、車輪とレールの接する面積がとても小さいため、レール表面や車輪に汚れがあると、電気が通りにくくなり、駅から車両が発車しなかったり、走っている途中で止まってしまったり走行不良の最大の原因となってしまいます。その汚れの原因として、主に二つの事が挙げられます。



車両を磨く科学科の職員

 
 一つ目は、車輪とレールの間に小さな火花が散り、ススのような汚れが車輪とレールに付着してしまう事。二つ目は、レールと車輪が常に外気にさらされるため、表面に酸化被膜(サビ)が形成される事などです。

 Nゲージの車両が常に元気に走るためには、毎日の整備が欠かせません。まず、ジオラマ全体に張り巡らされたレールの整備は、整備専用のNゲージ車両を走らせます。この車両の底には、掃除機のようにほこりを吸引する装置が付いたもの、布でレールを磨く装置が付いたものの2種類があり、それらを走らせることによってレールの汚れを取り除きます。

 次に、車両の車輪は、綿棒を使って、一つ一つ手作業で丁寧に磨いていきます。小さいだけに手間がかかりますが、Nゲージが元気に動く姿を見ると、とても嬉しくなります。この整備の成果が、鉄道模型の走る秘密です。

 この成果は、鉄道ジオラマショー(休館日を除く、毎日11時、15時、17時開催)や、鉄道模型を操縦する運転シミュレーターなどで発揮されます。私達の整備したNゲージが、ジオラマの中を力強く動く姿をぜひお楽しみください。

(事業課 梅津 朋子)

2009年4月23日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より