科学の広場

浮く野菜・沈む野菜の科学

 春の陽気が眠気を誘うこの季節、食卓に目を向けると、タケノコや菜の花など、色とりどりの春野菜たちが私たちの目を楽しませてくれます。

 これら野菜を調理する際、下ごしらえとして、切った野菜を水にさらすのですが、これは野菜の変色を防いだり、アクや臭みを抜いたり、生野菜をパリッとさせる効果があります。その際、水に浮く野菜もあれば、水に沈む野菜もあるのをご存知でしょうか? ピーマンやキャベツ、キュウリは水に浮きます。しかし、ジャガイモやサツマイモ、ニンジンは水に沈みます。

 この野菜の浮き沈みには、ある関係があります。それは野菜の生育環境です。基本的に地上で生育する野菜は水に浮き、地中で生育する野菜は水に沈むという関係があります。ピーマンやキャベツは土の上で育つので浮きますが、サツマイモやニンジンは土の中で育つので沈みます。


浮く野菜と沈む野菜

 
 では、重いスイカとカボチャはどうでしょう? スイカとカボチャは地上で育つので、重くても水に浮きます。それでは穴の開いているレンコンはどうでしょう? レンコンは泥の中でできる野菜なので、穴が開いていても水に沈みます。

 なぜ同じ野菜なのに、地上の野菜と地中の野菜で浮き沈みに違いがあるのでしょう?

 もし、地中の野菜が浮いてしまうと、雨が続いて土がドロドロになったとき、地表まで浮いてしまい、枯れてしまいます。また、地上の野菜が重いと、茎にかかる負担が大きいので、軽いほうが有利です。

 このように、野菜たちは長い進化の過程の中で淘汰(とうた)され、地上の野菜は水に浮き、地中の野菜は水に沈むようになったのです。


 
 しかし、この関係には例外があります。それは玉ねぎやトマトなどです。玉ねぎは地中でできる野菜なので沈むはずですが、水に浮いてしまいます。また、トマトは熟し切っていないものは水に浮くのですが、真っ赤に熟した完熟のトマトは水に沈んでしまいます。

 この他にも例外的な野菜はありますので、いろいろな野菜で実験してみると面白いかもしれません。

 では、沈む野菜ニンジンを小さく切ってみるとどうでしょうか?

 小さくなったため軽くなり、浮きそうな気がしますが、実際は浮きません。浮くか沈むかは重さではなく「密度」で決まります。

 水とニンジンを同じ体積で重さを比較したとき、ニンジンのほうが重くなります。つまりニンジンのほうが水より密度が大きいので沈むのです。ニンジンをいくら小さくしても沈んでしまうのは、体積と重さの関係(密度)で浮くかどうかが決まるからなのです。

 また、太っている人は浮きやすいとよく言われます。これは、脂肪の密度は水より小さく、筋肉の密度は水より大きいためです。体重100キログラムある人でも、脂肪がたくさんあると密度が低くなり、浮いてしまうわけです。浮き沈みには重さではなく、密度が重要なのです。

 5月には科学館で、科学の実験教室 サイエンススタジオ「鉄が浮く!木が沈む!浮力のふしぎ」を実施します。沈むはずの鉄を浮かせたり、浮くはずの木を沈ませたり、浮力に関する実験や工作を毎日開催します。ぜひご参加ください。

【 サイエンススタジオ「鉄が浮く!木が沈む!浮力のふしぎ」 】

 
(郡山市ふれあい科学館 事業課 後藤 利貴)

2010年4月29日 福島民報新聞 情報ナビ[たいむ] 「スペースパーク便り」より