私たちの食卓に並ぶ塩は、身近な調味料として欠かせないだけでなく、人間の体内の血液などに含まれ、体の水分の量を調節します。胃などの消化器官の消化液の成分として働くなど大切な役割を果たしています。
塩の結晶
【塩の色は?】
塩の色は何色でしょうか? この質問に「白」と答えた人が多いと思いますが、塩は無色透明です。白く見えているのは塩の小さな粒が光を乱反射させているためです。本当に透明なのか、ルーペなどを使って確かめてみましょう。
【塩の結晶】
結晶は、物質を構成している分子やイオンなどが規則正しく並んだ個体のことをいいます。塩の結晶を作るには、塩がこれ以上水に溶けない状態の飽和食塩水を作り、水分をゆっくり蒸発させると、結晶ができます。塩の化学名は、塩化ナトリウム(NaCl)で、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)の二つの物質(イオン)からできています。
この二つの物質が互い違いに規則正しく並ぶことによって結晶になっています。塩の基本的な結晶の形は正6面体(サイコロ形)ですが、成長する時の条件の違いによって、逆ピラミッド(トレミー)や板状(フレーク状)、枝に似た樹枝状などの形になることがあります。
岩塩と岩塩を割った様子
【塩の原料】
塩は、大きく分けて三つの方法で作られています。一つめは、海の水を使う方法です。機械で海の水をくみ上げ、「イオン交換膜法」といった方法で工場などで作られます。昔は、海の水を土の上にまき、太陽の熱で乾かして塩を取り出していました。
二つめは、池や湖から海水より濃い塩水をくみ上げ、海水と同様に水分を蒸発させて塩を取り出す方法です。三つめは、岩塩という塩の塊を土の中から堀り出し、削って作る方法です。これは、海水が地殻変動などによって地中に閉じ込められ、長い年月をかけて岩のように固まったものです。日本では、塩水の池や湖、岩塩は無いので、海水を使った方法で塩を作りだしています。
【岩塩で実験!】
岩塩を使った面白い実験を紹介しましょう。準備するのは、岩塩(クリスタル岩塩)、金づち、釘、カッターマットなどの板です。岩塩を板の上に載せ、釘(くぎ)を立てて金づちで釘をたたいていくと、岩塩がきれいにスパッと割れ、透明なつるつるの面が現れます。
さらに、割れた面に対して直角に次々と割り続けると、美しい透明なサイコロのような立方体が出来上がります。まるで宝石のようで、これが塩の塊とは思えない美しさです。うまく割れると大きな物ができるので挑戦してみてください。この割れ方のことを、へき開といいます。へき開は、鉱物の割れ方のことで、割れ方によって、「完全」「明瞭」「不明瞭」「なし」に分類されます。
岩塩はナトリウムと塩素が規則的に並んで結晶化した物質で、へき開した面がきれいなので、完全へき開に分類されます。
【科学館で実験】
10月の科学の実験教室サイエンススタジオでは、「塩」に関する実験を行っています。この岩塩を割ってへき開を体験する実験もできますのでぜひご体験ください。
(郡山市ふれあい科学館 事業課 鈴木 典秋)
2010年10月7日 福島民報新聞 情報ナビ[たいむ] 「スペースパーク便り」より