星の広場

神秘、土星の環が見えない?

 9月に入り、少しずつ秋らしい季節になってきました。最近では、夜8時ごろ南東の空高くに木星の明るく輝く姿が見られますが、今回は木星の隣の惑星である土星について紹介します。



1995年、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した
環が消えた土星(上)と、その直後の土星(下)
(C)NASA/Hubble

 土星は私たちの太陽系では、木星に次いで2番目に大きな惑星で、木星のさらに外側を約30年かけて太陽の周りをまわっています。何と言っても、土星には立派な環があります。もしかしたら、駅前観望会などで土星の環を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

 ところが、明日9月4日に、この環が完全に見えなくなってしまうのです。どうしてこのような手品みたいなことが起きるのでしょうか。

 秘密は、環の厚さにあります。環の広がりは、土星本体の2倍以上に広がっていますが、その厚みは、なんと数十メートルほどしかありません。ビッグアイの球体(直径26メートル)を土星本体に例えると、環の厚みはどれぐらいになると思いますか? 答えは1ミリメートルの千分の一ほどしかありません。これはくもの糸ほどになります。

 このようなとても薄い環を傾けながら土星は太陽の周りをまわっているので、地球から見ると環の見え方が少しずつ変わっていきます。そして、およそ15年に1度、土星を真横から見るような位置関係になります。そのとき、土星の環は見えなくなってしまい、それが明日9月4日にあたります。

 実は、先月8月11日にも土星の環は消えました。このときは、環の真横から太陽の光が当たっていたために見えなくなりました。



探査機カッシーニが撮影した木星(上)と、
探査機ガリレオが撮影した木星の環の様子(下)
(C)NASA

 この土星の環が消えた様子を今から400年ほど前にも見ていた人がいました。イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイです。ガリレオは自作の望遠鏡で土星を見ました。すると、土星の横に何かくっついているものを発見しました。これを見たガリレオは「土星には耳がついている」と表現したそうです。そして、継続的にこの土星を観察しました。すると、あるとき土星の横にくっついていた「耳」が消えていたのです。その後、また見えてきたということもガリレオは記録しています。まさに、ガリレオも環の消えた土星を見ていたということですね。

 もちろん、当時のガリレオにとっては、「耳」の正体が環であることや、その環を真横から見ていた、ということは知りませんでした。それでも、その様子を詳しく観察し、記録として残すことで、当時の人々に新たな宇宙の姿を広めるとともに、現在では貴重な資料となっています。

 明日、このような環の無い土星を見てみたい!と思うかもしれませんが、この時期の土星は太陽のすぐ近くに見られ、夕方に太陽と一緒に沈んでしまうので、残念ながら土星の姿を見ることは難しいでしょう。次に土星の環が消えるのは2025年になります。

 ちなみに、今夜明るく見える木星にも環があることが探査機などの調査によって分かってきました。こちらは、非常に薄いので地上の望遠鏡では見ることはできません。その他、太陽系には環を持つ惑星があります。どの星なのか調べてみるのも面白いでしょう。


 
 今年は世界天文年です。ガリレオが望遠鏡で宇宙を見てから400年たつ節目の年に、みなさんも神秘的な宇宙の世界に触れてみませんか?

 ひとまず、明日の夕方は、西の空に沈んでいく環の無い土星の姿を想像しながら、東からのぼってくる環が見えない木星を見つけてみてください。

 
(事業課 水谷 有宏)

2009年9月3日 福島民報新聞 情報ナビ[たいむ] 「スペースパーク便り」より