(図1)写真右上が織姫(こと座のベガ)、
左下が彦星(わし座のアルタイル)。
その間の白い帯が天の川。(写真撮影:津村光則)
今年も七夕の季節がやってきました。科学館22階展望ロビーには笹が飾り付けられ、願いごとを書いた短冊でいっぱいになります。
天の川を挟んで離れ離れに暮らしている2人、織姫と彦星が1年に1度、7月7日の夜にだけ会える星空の恋物語である七夕物語は、現在では日本全国多くの方に親しまれています。
短冊に願いごとを書いて笹につるす風習は、織姫が機織りの名人であることにちなんで、機織りや針仕事が上手になりたいと願ったのが始まりと言われています。笹に飾る理由は、笹は成長が早いことから、すくすく伸びて天まで届いてほしい、という願いが込められているようです。
ところで、みなさんは織姫と彦星を実際の夜空で見つけることできますか。7月7日、夜の9時ごろ東の空を見上げてみてください。明るく輝く星が2つ見えるはずです。高いところに見える星が織姫、低い星が彦星です。織姫はこと座のベガ、彦星はわし座のアルタイルという名前の星です。街明かりのある場所でも十分探すことができますが、もっと星の見える山奥などに行くと、織姫と彦星の間にうっすらと白い帯のような姿を見ることができます。これが天の川です。その正体はたくさんの星の集まりです。あまりにも星が集まっているのでまるで川のように見えているわけです。(図1)
(図2)織姫と彦星の宇宙での本当の距離は
16光年もあります。(C)GOTO
夜空に輝くこの2つの星は、宇宙の中でどれくらい離れているのでしょう? 距離にすると16光年もあります。光年とは天文学で使う距離の単位で、光が1年間に進む距離のことを言います。1光年は9兆4600億キロ。つまり、織姫と彦星はおよそ150兆キロも離れているのです。なんだか想像もつかないくらい遠いですね。例えば、彦星が織姫に「こんにちは」とメールを送ったら、織姫には16年後にメールが届きます。すぐに織姫が返信しても彦星に届くのがまた16年後。メールですらこれですから、会うなんてもっと大変そうです。(図2)
ですから、実際に7月7日の夜だけ2つの星が近づく…ということにはなりません。昔の人はこの様子を悲しんだのか、7月7日には、たらいに水を張り、水面に織姫と彦星を映し、手で水をゆっくりかきまぜることで、水の世界で織姫と彦星を逢わせてあげていたそうです。
科学館では7月13日までプラネタリウム親と子の天文教室「七夕物語」を投映しております。満天の星の下で織姫と彦星を探し、1年ぶりの2人の再会を家族や恋人たちとお楽しみください。
(事業課 水谷 有宏)
2008年6月26日 福島民報新聞 情報ナビ タイム「スペースパーク便り」より